マチポンブログ

言葉は生き物ではなく、単なる道具だと思う。

「ぼんのう」という108画の漢字は私が作った

このような字を見たことはないだろうか。

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これは、私が作った「ぼんのう」と読むとされる、108画の字である。

現状

平仮名で「ぼんのう」と画像検索すると、この文字で埋め尽くされる。また、様々なサイトで108画の漢字として掲載されている。

最近では、YouTubeTikTokにこの漢字を書いてみた動画がアップロードされている。

私もどこに掲載されているかは把握していないので、読者の皆様はいろいろ検索してみてほしい。様々な誤字も存在する。*1*2

作成の経緯と由来

この文字は私が2011年11月2日に思いついた。

今となっては、詳細は忘れてしまったが、記憶していることを書いておく。

煩悩は108あると言われているが、具体的に108という数字はどのようにして導き出されるのかが気になった。

そこで、調べたところ、以下のような情報があった。

除夜の鐘は108回撞かれる。この「108」という数の由来については次のような複数の説がある。
1. 煩悩の数を表す
眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)の六根のそれぞれに好(こう:気持ちが好い)・悪(あく:気持ちが悪い)・平(へい:どうでもよい)があって18類、この18類それぞれに浄(じょう)・染(せん:きたない)の2類があって36類、この36類を前世・今世・来世の三世に配当して108となり、人間の煩悩の数を表す。

Wikipedia「除夜の鐘」2011年2月2日版)

なんとなく、その漢字を書き出し、画数を数えたところ、108に近い数字だった。「あ、これは一部旧字にして調整すれば108になるんじゃない?」と思いつき、かつ、一文字にすれば面白いのではないか、と思ったのである。

面白いとなると、RTが稼げる。承認欲求が満たされる。全く、煩悩の塊である。「好」の字は収まりが悪かったので分解して「女子」にしたら、もっと煩悩っぽくなった。

こうして、私の煩悩によって生み出されたのが「ぼんのう」という文字である

流布

2011年11月2日に最初にツイートした際はあまり伸びなかった。大変残念であった。

しかし、2012年5月19日に筆で書いて改めてツイッターに投稿したところ、RTされた。(アカウントを転生したので、今となってはどのくらいRTされたかわからない)

当時、RT数の多いツイートを自動でパクるbotがあり、そのbotにパクられた。そして、そのbotのツイートがまたRTされ、さらにそれをパクるbotが現れるという流布の仕方をした。(なお、最初にパクったのは「発想トイレ」というアカウントであったと記憶している)

画像として出回っているものの多くは、この際使用した画像である。

こうして、私のツイートから画像だけが流布する形となり、各所に広まっていった。

漢字とは何か

この記事を読んで、「ぼんのう」って漢字は存在しなかったんだ。とか、創作漢字だったんだ。などと思う人もいるだろう。

しかし、ちょっと考えてみてほしい。漢字は全て誰かが作ったものだ。誰かが作ったから漢字の範疇から出されるのであろうか。

6年ほどの歳月を経て、多くの人が知るものとなった。私自身、知り合いから、「この漢字知ってる?」と見せられたことがある。笑った。

このように、多くの人が認識している文字を、「存在しない」とは言いがたいのではないか。

難しい漢字というのは、往々にして雑学や自慢に使われる。この「ぼんのう」の字は、自慢話のためだけに存在している、日本で最も画数の多い漢字なのかもしれない。

*1:この記事の執筆者からは掲載したいと連絡があった。一文字書くだけで108の煩悩が取り去れるというすごい漢字を書いてみた | エンタメウス

*2:また、小池和夫(2013)『異体字の世界 最新版』河出書房には創作漢字として掲載されている。これも連絡があったものである。